ケガ・ヤケド・傷跡・ケロイド
ケガ・ヤケド・傷跡・ケロイド
けがにも上記のように様々な状態があります。受傷機転により傷の状態も変わります。基本的に、けがを受傷した際にはまず創部の洗浄が必要です。屋外での受傷であれば、砂利などの異物が傷の中に混入することがあります。出血を伴うことも多いですので、ご自身で洗浄するとなるとなかなか十分にできないと思われますので、まずはすぐに医療機関を受診してください。当院でも可能な限り即時に対応するよう心掛けています(予約の患者さんをお待たせすることもあるかもしれませんがご了承ください)。必要であれば局所麻酔をしてしっかり異物を除去して洗浄します。縫合の必要があればしますし、テーピングや軟膏処置で済むこともあります。犬や猫などによる咬傷は、口の中のばい菌が傷の中に入っていると考え、十分に洗浄することはもちろんですが、場合によってはあえて傷を縫合などせずに経過を見ることもあります。これは、傷の中に炎症をため込まないようにすることが目的です。
けがによる傷は、初期治療を間違えるとその後の治癒経過、傷跡の残り方にも大きく影響を及ぼします。お子様のけがにもできる限り対応します。傷の扱いには絶対的な自信を持つ形成外科専門医に是非ご相談ください。
※ただしある程度深さのあるけがは、傷跡が消えてなくなることはありませんので、その点はご了解ください。
これはけがによる傷跡に色が残り、イレズミのようになる状態です。自転車走行中に転倒し、道路のアスファルトで擦過傷(すりきず)を受傷した際などが代表的な例です。アスファルトの黒い色素が傷の中に入ると、傷が治った後にその色素が青黒っぽく線状に浮かび上がってきます。できれば受傷時にその色素を除去しておければ良いのですが、除去しきれなかった色素が残った場合は、レーザー治療で薄くすることができます。保険適応の治療ですので、そのような色が残った場合はご相談ください。
熱傷(やけど)にも様々な原因があります。
基本的にやけどの深さは、接したものの温度と時間に比例して深くなります。お湯の場合は、かかった瞬間から温度は冷めていくので深くなりにくく、火が燃え移った場合は、消し止めるまで温度が変わらないので深くなりがちです。湯たんぽなどの低温のものでも、一晩中(何時間も)接していると深くなります。化学熱傷の場合は、薬品などがジワジワ皮膚に浸透していくと時間とともに深くなっていきます。
表層レベル(表皮)のやけどです。当初は赤みや痛みを伴いますが、数日で治ることが多いです。基本的には跡を残さずに治ります。
表皮の下の真皮レベルにまで至ったやけどです。受傷当日もしくは翌日以降に水疱(水ぶくれ)を形成します。Ⅱ度熱傷の中でも比較的浅いもので、傷面に痛みを感じ、水疱の下は赤みを伴います。初期治療を誤らずに適切に治療していけば、2週間ほどで治癒し、将来的な跡は残らないことが多いです。
同じ真皮レベルまでのやけどでも、この深達性Ⅱ度熱傷の方はより深く、浅達性と同様に水疱形成はするものの、痛みは弱いか感じなくなります。経過とともに傷面は白っぽくなることが多いです。治癒までに4週間ほどを要し、跡が残る可能性が高いです。
皮膚全層もしくは皮下にまで至るやけどです。火炎熱傷や化学熱傷はⅢ度になることが多いです。水疱形成すらせず、傷面は白色もしくは黒色を呈し、痛みを感じません。自然治癒には1ヶ月以上を要し、跡は残るものと考えてください。ダメージを受けた皮膚を切除し(デブリードマン)、植皮術(皮膚移植手術)を要することも多いです。
やけどを受傷した際は、まずは冷やすことが基本です。氷やアイスパックを使うのもいいですし、範囲が広ければ水道水などの流水に15分ほどあてるのもよいです。ただし、冬場などは低体温症に注意してください。衣服は無理に脱ぐと水ぶくれの皮を剥がしてしまう可能性があるので、できればそのまま冷やして医療機関を受診してください(状況にもよりますが)。
軟膏による保存的治療が基本です。処置の方法をお教えしますので、自宅での処置が可能です。ただし定期的に経過を見せに来てください。
これも軟膏治療で見ていくことが多いですが、経過により適切な軟膏に適宜変更していくことが大切です。漫然と同じ軟膏を使い続けて治りが悪かったという方もよく目にします。傷面にばい菌感染を合併すると、より治りが悪くなりますので、適切な処置が非常に大事です。跡が残りやすい深さのやけどですが、可能な限りきれいに治すには、専門医の診察を受けていただくことをお勧めします。
ダメージを受けて自然治癒が見込めない皮膚は、早めに除去する方が良いことが多いです。いつまでも元気のない皮膚をそのままにしておくと、ばい菌感染を合併しやすくなります。範囲が広い場合や、植皮手術が必要な場合は、提携の病院にご紹介し治療を受けていただくことも検討します。
子供さんの場合は、大人の症例と少し異なることもあります。手術が必要なレベルの熱傷でも一旦は保存的に治癒させ、しばらく経過を見た後に必要な部分だけ手術を行うという場合もあります。ただし、経過が悪い方に向かいつつあると判断した際には、ただちに入院できる医療機関をご紹介することもあります。
火災や爆発などで炎や熱気を吸い込んでしまった可能性がある場合は、呼吸の通り道である気道に熱傷が及んでいる可能性があります。時間とともに気道周辺が腫れてくると呼吸困難を来たし、最悪の場合心肺停止となることがありますので、すぐに救急車を呼んで高度医療機関を受診してください。
前述の通り、強い酸やアルカリの薬剤に触れて起こる熱傷です。特殊な中和剤を用いて早期に治療する必要があるため、専門的な高度医療機関を受診してください。
手術後やケガによる傷跡は、長い経過のうちに徐々に落ち着いてくるものですが、目立って残る場合もあります。肩や膝など、大きく動く関節の部位にできた傷跡は、安静が保てないために肥厚して(ふくらんで)くることが多いです。また色素沈着といって、シミのように茶色っぽい色調がなかなか消えないこともあります。
傷ができると、それを治す課程で線維芽細胞がコラーゲンを生成し、瘢痕という状態になります。これは傷を埋めようとして働く作用なので、深い傷や開いた傷の場合はその作用がより活発になり、多くのコラーゲンが生成されます。肩や膝などの大きな関節の部分に傷ができた際も、動いて離れようとする傷をがんばってひっつけようとするのでコラーゲンが過剰に作られます。よって、深い傷、しっかりひっついていない傷は、過剰なコラーゲンによって盛り上がった傷跡(肥厚性瘢痕)となりやすいのです。また、それに伴って毛細血管も増生するために赤い色調を呈します。しかし後述するケロイドと違って、肥厚性瘢痕は長い年月をかけて徐々に落ち着いていきます。赤く盛り上がった硬い瘢痕も、いずれは白っぽく軟化して平坦に近づいていきます(成熟瘢痕)。ただしこれには5年~10年もかかることもあり、気になる瘢痕の場合は、治療を検討します。
・肥厚してくるのを予防するための圧迫治療
・線維芽細胞の増生を抑える薬の内服
・ステロイドの外用テープ
・ステロイドの局所注射
・切除手術
関節部やまぶたなどの動く場所にできた傷の場合、縮まって治った瘢痕はひきつれを起こすことがあります。これを瘢痕拘縮といいます。「まぶたが閉じられない」「脇の下が突っ張って肩が上がらない」「手のひらのやけど跡で指の曲げ伸ばしがしづらい」などの症状として出ることがあります。
・瘢痕拘縮形成手術
・植皮術
やけどの跡やすり傷の跡などが茶色っぽく残ることがあります。これを外傷後色素沈着といいます。深い傷など、治るまでに時間がかかった場合ほど、色素沈着が強く出る傾向にあります。あとはその方の肌質、メラニンの量、受傷部位によっても左右されます。特に膝から下(すねの部分や足の甲)の色素沈着は時間がかかる印象があります。この状態に対して、基本的にレーザー治療は行いません。
・経過観察
・物理的刺激、日光の刺激を避ける
・軟膏やクリームの外用剤
・色素を薄くする作用のある薬の内服
同じ傷跡でも、このケロイドは瘢痕とは一線を画す病態です。一見、瘢痕と同じように赤く盛り上がった硬い病変ですが、経過が異なります。まず、深い傷や大きな傷ではなくても生じます。例えば耳たぶのピアスの穴や、肩の予防接種の跡、胸にできたニキビ跡などから生じることがあります。次に、肥厚性瘢痕は時間の経過とともに改善(成熟)していくのに対し、ケロイドはどんどん増大していくことが多いです。また、遺伝や体質が大きく影響しますので、「ケロイド体質」の方特有の病態とも言えます。好発部位は、耳、肩、胸、下腹部で、ほとんどがこの部位に出ます。単に手術で切り取るだけでは、その手術の傷跡からケロイドが再発することが予想されるので、術後に放射線療法を併用したり、しっかり圧迫する後療法を行ったりします。
<治療>
・肥厚してくるのを予防するための圧迫治療
・線維芽細胞の増生を抑える薬の内服
・ステロイドの外用テープ
・ステロイドの局所注射
・切除手術(+放射線療法、圧迫治療)