シミ・くすみ
シミ・くすみ
ひとことで「シミ」といっても様々なタイプがあります。だいたいは「茶色っぽい色素斑」として認識されていることが多いでしょう。この正体は、皮膚の表層レベル(表皮)のメラニン(色素)です。しかしその他の病態もあり治療法も違ってきますので、正確な診断が重要です。また、同じ病態でも治療のゴールは人によって様々なので、複数のご提案をすることもあります。中には悪性の疑いがあり検査が必要になってくるものもありますので、まずは受診していただきご相談ください。
最もよくあるタイプのいわゆる「シミ」です。褐色で境界が比較的はっきりしています。長年の紫外線刺激の積み重ねが原因で、年齢を重ねて出てきます。やはり多くは、紫外線の影響を受けやすい露光部位(日に当たる部位)である顔面、腕や手の甲に見られます。「老人性」とはいえ、20代で出現することもあります。当初は平坦な老人性色素斑が徐々に盛り上がってきたものを脂漏性角化症といいます(「いぼ」の項で説明)。
小学生頃に出現し思春期に目立つようになる、いわゆる「そばかす」です。比較的小さな褐色斑が、左右対称性に頬部から鼻根部に出現します。病態としては表皮のメラニン増加ですが、体質的な問題が原因と言われていて、遺伝性も示唆されています。日焼けや妊娠で増悪するとも言われています。
以前は、遅発性両側性太田母斑様色素斑とも呼ばれており、「あざ」の項で説明している太田母斑と同じく、病態は真皮メラノサイトーシスです。これは、真皮レベルでのメラノサイト(色素細胞)の増加です。他の「シミ」(表皮レベル)と比べて病変が深いため、茶色というよりは若干青っぽい(実際は灰色っぽい)病変として見られることが多いです。頬部や目の周りに左右対称性に出現することが多いですが、鼻根部、前額部に出ることもあります。太田母斑と同様にレーザー治療が良く効きますが、肝斑との鑑別が重要です。
少し淡い褐色斑で、境界があまりはっきりせずぼんやりしていることが多いです。頬骨部に出現することが多く、おでこや口周りに出ることもあります。病態としては表皮のメラニン増加ですが、原因は物理的に擦る刺激により皮膚のバリア機能が破壊されることと考えられています。この状態であまり刺激の強い治療を行うのはお勧めできません。他の「シミ」はレーザー治療を選択肢としてご提案することが多いですが、この肝斑にレーザー治療は基本的には行いません。もっぱら肌質の改善を軸に経過を見ていきます。一番は擦る刺激を極力やめることで、内服、外用治療を補助的に用います。イオン導入、超音波導入などの刺激の少ない治療で肌質改善を促すこともあります。
けがやヤケドを受傷した際には、治癒過程で強い炎症反応が起こります。この炎症反応の後に皮膚が茶色くなることを炎症後色素沈着といいます。傷が治った後は、一旦赤みを帯びた皮膚になるのですが、その後1ヶ月ほどして茶色くなってくる(色素沈着)ことがあります。これは炎症によって増加したメラニンのせいです。深くて治るまでに時間がかかった傷の跡ほど強く出る傾向にあります。また、その方の体質(皮膚質)、部位によっても違いがあります。基本的にはその後の時間経過で徐々に薄くなっていくので、無治療でも構わないのですが、色素沈着が強い場合、目立つ部分にできてしまった場合は、内服や外用を検討します。紫外線や擦る刺激を避けるということも必要です。レーザー照射は、さらに炎症を強める可能性があるので基本的にはしません。
優しい名前をしていますが、これは上皮内がん(皮膚の浅いレベルにとどまるがん)です。長年日光にさらされてきた部位にできるので、顔面や手の甲などに多いです。はじめは茶色いシミかなと思っていた部分が次第にカサカサしてきて、赤みを帯びるものもあります。これを治療せずに放置していると、有棘細胞がん(ゆうきょくさいぼうがん)という皮膚がんに移行しますので、早めの治療が必要です。液体窒素による凍結療法、専用の軟膏による外用治療、切除手術などがあります。まずは病理組織検査で診断をつけますので、一度受診してください。
「くすみ」という状態に対して特定の病名はありません。一般的には、「全体的に暗く、透明感のない肌」といったところでしょうか。これには様々な病態が考えられます。皮膚の老化によって「肌つや」が失われている、血行不良により血色が良くない、シミのようにメラニンが沈着しているなど。
皮膚の細胞は日々新しく生まれ、下の層から上の層に押し出されていきます。最表層の角質層まできた古い細胞は、垢(あか)となって自然に剥がれ落ちます。これを皮膚のターンオーバー(新陳代謝)といいますが、これがうまくいかないと新しい細胞がなかなか上がってこなかったり、古い細胞がいつまでもとどまったりということになります。古い細胞で覆われた皮膚はくすんで見えますし、そこにメラニンも含まれると暗い色調になります。年齢とともにこのターンオーバーの周期は長く(遅く)なりますが、寝不足、ストレス、偏食、喫煙といった生活習慣の乱れ、紫外線刺激や乾燥も原因となります。
皮膚は外的刺激から身体を守る最外層の「臓器」といわれています。このバリアが破壊されるとダメージを受けやすくなります。紫外線刺激や乾燥も原因ですが、一番は物理的刺激と考えます。洗顔などの際に過剰に擦りすぎるのは、皮膚のバリア機能の破壊につながりますので気を付けてください。
上記でも何度も述べていますが、乾燥は肌にとって大敵です。適切なスキンケアを習慣にすることもくすみを改善させる一歩と考えます。
しわ、たるみによってできた陰影がくすみのように見えることがあります。たるんだ部分によってできた影、それに伴って凹んだ部分にできる影があります。正面から見たら黒ずんで見えるけれど、角度を変えて見るとなくなるということもあります。ハリのある肌と比べると、どうしてもくすんで見えるのです。
血の巡りが悪いと「血色のない肌」としてうつります。ストレスや寝不足、喫煙、冷えには注意しましょう。
シミやくすみの種類によっては当てはまらないものもあります。治療法を選択するのにもまずは正確な診断が必要です。他院での治療で改善しなかったという方も、まずは受診してみてください。
即効性のある治療ではありませんが、ある程度継続的に用いることで徐々に効果を発揮します。皮膚の健康維持、予防という意味合いでお考えください。
これは湿疹や喉の炎症を抑えたり、止血作用のある薬ですが、肝斑などに対し、メラニンの生成課程に働いてその産生を抑えるという効果があると言われています。
ビタミンCの働きには、メラニンの生成抑制と代謝促進、コラーゲンの生成にも関与していると言われています。
ビタミンEの持つ抗酸化作用、血行促進により、皮膚のターンオーバーの改善、メラニンの排泄など。
これも即効性のある治療ではありませんが、日々のメンテナンスに用いるのは良いでしょう。内服と比べると、かぶれなどの副作用を起こす可能性が少しありますので、状態を見ながら使用します。
メラニンの生成を抑制し、メラノサイト(メラニン産生細胞)を減少させる効果があります。炎症後色素沈着や肝斑、レーザー照射後などに使用します。
これはビタミンA誘導体で、表皮のターンオーバー(新陳代謝)を促進させ、結果としてメラニン排出を促すといった効果があります。ただし、比較的刺激の強い外用剤なので、かぶれ症状などに注意し、適切に使用しなければなりません。
ビタミンCには、メラニンの生成抑制と代謝促進、コラーゲン生成といった美肌効果の他、免疫力向上、疲労回復、抗がん作用まであると言われています。食物やサプリメントで摂取することもできますが、口から摂取したビタミンCは体内に吸収されるのはわずかで、ほとんどは排泄されてしまいます。しかし高濃度のビタミンCを点滴で血管から直接注入することにより、高い効果を効率よく得ることができます。
イオン導入・超音波導入とは、トラネキサム酸、ビタミンCなど有効成分を豊富に配合したトリートメント剤をお肌に塗って微弱な電流や超音波を流し、皮膚の深部に浸透させる方法です。皮膚表面にあるバリア機能を通り抜けて有効成分を深部に届け、シミ・しわ・くすみ・ニキビ・日焼けなどのトラブルを改善します。特別な治療法というよりは電流や超音波の力を借りて有効成分を皮膚の深部にダイレクトに届ける贅沢なスキンケアといった方がわかりやすいかもしれません。
様々な種類があるイオン導入法の中で、当院が採用しているエンビロンのイオントフォレーシスの特長は、直流電流を断続的に流すパルス型直流電流を採用している点にあります。これにより皮膚への電気的負担はほとんどなく効率的にイオン化を引き起こすことで浸透効果も上がります。イオントフォレーシスを使用すると有効成分の浸透はただ塗るだけより約4倍高まることが分かってきています。
ソノフォレーシスとは具体的には音波の振動により、角質層のバリアにキャビテーション現象(空洞形成)を起こし、その空洞内に物質を移動させることを言います。そうすることで比較的大きな分子量のものでも浸透しやすくなります。ソノフォレーシスを使用すると有効成分の浸透はただ塗るだけより約40〜100倍高まることが分かっています。
フォトフェイシャルとは、IPL(Intense Pulsed Light)と呼ばれる特殊な「光」で、一度の施術でシミ・そばかす・しわ・たるみ・にきび・にきび跡・赤ら顔(毛細血管拡張)・毛穴など肌トラブルの改善効果のある治療です。シミ・そばかすの原因であるメラニン色素に作用し、改善するとともに真皮層にも働きかけることでコラーゲンを増生し、肌のキメや透明感・はりのある素肌に導きます。フォトフェイシャルは肌に優しい光なので素肌を傷付けることなく、施術中はゴムで弾かれるような軽い刺激を感じる程度です。ダウンタイムがほとんどなく施術直後からメイク可能ですので、気軽にお受けいただけます。
・シミ、くすみ
肌は紫外線や摩擦などの刺激を受けると、皮膚に存在するメラノサイトが活性化しメラニン色素が作り出されます。通常、肌のターンオーバーによって作り出されたメラニン色素は角質やアカとなってはがれ落ちますが、日焼けなどによってメラニンが過剰に生成されたり加齢によってターンオーバーが乱れたりすると、メラニンが蓄積されやすくなります。フォトフェイシャルを肌に照射すると黒いメラニン色素に反応し、発生した熱の作用によってメラニンが破壊されます。分解されたメラニンは、老廃物として皮膚のターンオーバーにより排出が促され、肌の表面に浮き上がって5日から10日程で徐々にはがれ落ちます。
・赤ら顔(毛細血管拡張症)
肌表面から見える毛細血管にダメージを与え、毛細血管を収縮させることで赤ら顔の解消に働きかけます。
・毛穴の開き
たるみや乾燥などが原因で年齢とともに目立ってくる毛穴の開きを引き締め、きめの整った肌に導きます。
・小じわ、たるみ
照射することで、コラーゲンなどを作り出す線維芽細胞の働きを活性化させるため、照射後に肌の内側からふっくらとはりが蘇ります。はりが出ることで小じわの解消も期待されます。
ルビーレーザーとは、波長が694nmのレーザー光を出すために、発振媒質にルビー(宝石のルビーです)を使用しているレーザーのことです。この694nmという波長は、メラニン色素に良く吸収され、かつコラーゲンやヘモグロビンにはほとんど吸収されないため、皮膚の正常組織や血管にはほとんどダメージを与えることなく、選択的に効率よくメラニン色素を破壊できます。「Qスイッチ」とは、機械の中で特殊な操作を加えることで、非常にパワーの強いレーザー光を短時間で照射することができる装置です。これにより、高いエネルギーで、深く、周囲の熱損傷を最小限に治療できるのです。メラニン色素をターゲットとしたレーザーでは、このQスイッチルビーレーザーは非常に優秀な機能を発揮します。老人性色素斑や雀卵斑といった表皮病変、ADMや太田母斑といった真皮病変にも高い効果があります。ただし、即効性があり効果的である反面、照射後には表面が軽いヤケドのような状態になります。週間前後は軟膏による手当が必要です。また、中にはレーザー照射後の色素沈着が起きてしまう方もおられますが、この色素沈着は時間の経過とともに薄くなり、いずれは消失します。